前回訪れた白駒池の紅葉が見事だったため、今度は噂に名高い谷川岳の紅葉を見に行くことになりました。
妻とジュニアにとって、これが初となる植生限界越えの登山です。
高山病は大丈夫か、寒さは大丈夫かなど、様々な不安を抱えての挑戦でした。
結果として、1回目は全く紅葉を拝めずに天候不良から撤退しました。この際は装備の不十分さについて考えさせられました。
装備品を整えて臨んだ2回目の挑戦では、道中は紅葉も楽しみつつ、山頂付近(肩の小屋)まで行くことができました。
紅葉を求めての谷川岳へ。2回にわたる挑戦の模様をお届けします。
1回目の挑戦:熊沢避難小屋まで
山行データ
No.7 谷川岳
エリア:谷川連峰(群馬~新潟県)
行動時間:3時間3分
歩行距離:約2.9km
累積標高差:△252m・▽458m
コース定数:6
ジュニア体重:13.4kg
アクセス:上越新幹線「上毛高原駅」下車「谷川岳ロープウェイ」行きバス(約50分)、上越線「水上駅」下車「谷川岳ロープウェイ」行きバス(約25分)/駐車場1500台
お得情報:「谷川岳ロープウェイ運賃+バス往復運賃」得々乗車券(2023年3月現在発売中止中)、モンベルクラブ加入者はロープウェイチケット割引あり
トイレ:ロープウェイ駅、山頂手前肩の小屋(冬季使用不可)
霧の中、熊沢避難小屋を目指す
紅葉を求めて訪れた谷川岳、ロープウェイとリフトを乗り継いでたどり着いた景色は一面霧に覆われていました。
リフトを下りたところにある鐘を鳴らして遊ぶジュニアを尻目に、私は迷っていました。進むべきか、引き返すべきか、と。ジュニアにはレインウェアを着せていますが、登山用ではなく普段使いのものであり防水性・透湿性は高くありません。また、ジュニアが履いている靴は普通のスニーカーです。雨こそ降っていなかったものの、湿った地面を歩けばあっという間に濡れてしまうでしょう。
当のジュニアはというと、霧に包まれた非日常的な光景が楽しいのか、どうやら歩く気満々なようです。ですがこの気候では、登頂は難しいでしょう。山頂からの景色も期待はできません。
本格的に雨が降り始めたり、ジュニアの様子に異常が見られたらすぐに引き返すという条件の下、我々はとりあえず熊沢避難小屋を目指すことに決めました。
見渡す限りの真っ白な世界です。目当てにしていた紅葉が見られないため、少ししょぼんとしてしまう私をよそに、ジュニアはぐんぐんと進んでいきます。岩が滑るので、リフト駅からしばらく続く下りは手をつないで慎重に進みます。
木道が現れると、ジュニアは「きしゃ」に変身して、「ぽっぽー」と汽笛を鳴らして軽快に進みます。転んでも何のそのです。
所々で抱っこをはさみつつも、熊沢避難小屋に無事到着しました。ここでランチタイムです。持参したお湯で簡単にラーメンを作り、おにぎりをぱくつきます。
不十分なジュニアの装備
そして下山します。ここまでよく歩いたジュニアは疲れたのか、帰りはずっと抱っこで、しばらくすると寝入ってしまいました。抱っこしながらでも両手を使えるように、モンベルの「ポケッタブルベビーキャリア」を出してジュニアを固定します。
3時間ほどで、初めての谷川岳山行を終えました。熊沢避難小屋で引き返したため、森林限界を超えることはありませんでしたが、装備や気候に照らして今回の判断は間違っていなかったと思います。幸い、霧雨より強くなることはなかったためジュニアの服は濡れていませんでしたが、靴は中まで水が浸透していました。熊沢避難小屋を超えて歩き続けていたら、体の冷えや靴の不快感など、様々なトラブルに見舞われた可能性があるでしょう。
今回の山行で私は、ジュニアには登山靴とレインウェアが必要だと考えるようになりました。もちろん、これは全ての子連れ登山者にあてはまるというわけではありません。我々の登山のスタイルや頻度、そしてリスク許容度に照らした場合、ジュニアには防水性を備える登山靴とレインウェアがあった方が安心だという結論に達しました。
今回の経験を踏まえた幼児用登山ギアの選び方については、下記記事をご覧ください。
2回目の挑戦:登頂
前回の反省を踏まえ、ジュニアの登山靴とレインウェアを購入したうえで、再度谷川岳に向かいました。晴れの予報でしたが、実際は曇りがちで、下山時には小雨。それでも時折晴れ間はのぞき、念願の紅葉を楽しむことができました。
山行データ
No.8 谷川岳
エリア:谷川連峰(群馬~新潟県)
行動時間:6時間12分
歩行距離:約5.4km
標高差:584m
累積標高差:△700m・▽876m
コース定数:16
ジュニア体重:13.4kg
見事な紅葉
ロープウェイから赤く染まった谷筋を眺めます。前回は霧で真っ白でしたが、今回は期待が持てそうです。
リフトで一気に1500m地点まで上がります。山肌に見える紅葉が見事です。安全登山の鐘をカンカンカンと景気よく鳴らし、さあ出発!…と思いきや、抱っこをせがむジュニア。前回は霧の中を果敢に歩いていたのに、天気の良い今日はなぜか歩きたがりません。こういう時は体調不良の時もあるので注意しつつ、抱っこ紐に収めて先に進みます。
ジュニアは抱っこと歩きを繰り返しつつ、熊沢避難小屋まで来ました。小屋でしばし休憩し、グミなどを食べて英気を養います。
小さなクライマー
前回は熊沢避難小屋で引き返しましたが、今回はさらに先へと進みます。しばらくすると、鎖場のある急な斜面が現れました。これを見て俄然やる気を出すジュニア。登る気満々で鎖に取り付きます。何でしょう、何か子どもの冒険心に火をつけるものがあったのでしょうか。はやるジュニアを制して、ダウンジャケットを脱がせ、ヘルメットを付けます。万一にも落ちないよう、私と妻で上下からサンドイッチして見守ります。この鎖場は、登山者が多い時は渋滞ポイントとなるそうですが、幸いこの日は入山者が少なく順番待ちは発生しませんでした。
熊沢避難小屋まではあれだけ抱っこをせがんでいたジュニア。小屋以降の岩場・鎖場では積極果敢に登ろうとする姿勢を見せます。アスレチック的な要素が魅力的なのでしょうか?
小さな登山靴に、ペツルのヘルメットをかぶって鎖を掴むジュニア。行きかう登山者の皆さんは優しく見守り、言葉をかけてくれました。いい山屋になるね。小さなヒーローがいるよ。ジュニアは元気に「こんにちはー!」と挨拶し、どこか誇らしげです。
残雪の急登
山頂が近づくにつれ周囲は霧に包まれ、景色は望めなくなりました。数日前に降ったと思われる残雪が道には残っています。気温が下がり、雨も降り始めてきたので、ジュニアにダウンジャケットを着せ、買ったばかりのレインウェアを着せます。抱っこしていると眠ってしまったので、そのまま抱っこ紐で固定します。
山頂を目前にしての最後の急登です。残雪で滑るので、軽アイゼンを装着します。持ってきておいて良かったです。慎重に歩みを進め、ようやく肩の小屋に到着しました。霧と雨で視界はゼロ。トマの耳は目前ですが、視界不良で危ないので断念します。
山小屋内に入るとジュニアも起きたので、外で沸かしたお湯を注いで「尾西のエビピラフ」を食べさせ、ココアを飲ませます。私は肩の小屋のオーナーにコーヒーを注文し、体を温めます。オーナーとしばし談笑した後、下山です。ジュニアは抱っこひもの中で熟睡。念のため、ヘルメットを着けたままです。3点支持で慎重に慎重に岩場を下り、無事にロープウェイ駅まで到着しました。ジュニアは道中ずっと熟睡していましたが、ロープウェイ駅に入ったタイミングで起きて「ロープウェイ!」と歓声をあげていました。
温泉と食事
無事に下山した後は、ショッピング、温泉、食事です。
育風堂
みなかみで50年続く精肉店が、2012年に本格ハムソーセージの工房を備えてリニューアルオープンしたお店です。併設のレストランでは、武尊山を臨むテラス席でソーセージプレートやローストポークを堪能できます。また、お隣のワインショップ「瀧澤」のワインを注文することも可能です。晴れた日には最高に気持ちが良いです。
こちらの「谷川の雪サラミ」は白カビタイプの生サラミで、予約必須の絶品です。中々手に入りにくいのですが、赤城高原SAで買えることがあります。
ワインとお酒の専門店 瀧澤
育風堂さんのお隣にあるお酒屋さんです。特に日本酒のラインナップが面白く、地元みなかみのお酒に加えて日本各地の個性的なお酒が並べられています。好みの味や予算を伝えれば、店員さんがワイン・日本酒の中かからおすすめをチョイスしてくれます。
湯テルメ谷川
谷川岳を後にして国道291号線を南下し、谷川橋を超えたところを右に入ると小高い丘の上に入ります。そこに広がるのが「谷川温泉」の街並みです。
湯テルメ谷川は、みなかみ町営の温泉施設です。設備は決して豪勢ではありませんが、リーズナブルなお値段で、立派な露天風呂を楽しむことができます。露天風呂は川沿いにあり、谷あいの景色を眺めながらせせらぎを聞くという贅沢な時間を過ごせます。
ラ・ビエール
窯焼きのナポリピザのお店です。450度の窯でわずか1分で焼き上げられたピザはサックリもちもちで本当においしいです。かつお値段もリーズナブル。我々はみなかみに行くたびに寄っています。上に紹介した育風堂さんや、瀧澤さんの商品もこちらで注文することができます。
「近くてよい山」谷川岳
以下の要因から、谷川岳は幼児連れの我々にとっても「近くてよい山」でした。
- 登山者が多いので安心感がある。
- 子どもの好きなロープウェイで高度を稼げる。
- 景色を眺めながらの稜線歩きができる。
- 岩場や鎖場など、子どもにとってアスレチック要素がある。
- 温泉や食事、お土産など下山後の楽しみが多い。
一方で、谷川岳は日本海と太平洋の分水嶺となっている山で、天候の変化が激しいことで有名です。お子様連れで登山に行く際は、天候を入念にチェックするとともに、万一の急変に備えた装備を必ず携行することをお勧めします。